テンションリダクションを営業のクロージングで使うコツ

テンションリダクション効果という言葉を聞いたことがありますか?

「テンション(tension)=緊張、不安」
「リダクション(reduction)=縮小、減少、低下」

言葉の通りですが、緊張した状態が終わったあとの心理効果を利用したマーケティング用語です。

店舗販売やECサイトでもよく使われていますが、営業にもよく使われるテクニックです。

テンションリダクション効果の活用例

実は身近なところでもテンションリダクション効果はよく使われています。

「心理的な緊張状態が解けた時に、安心して気が緩んでしまった状態」

に合わせたテクニックです。

いくつか例を上げていくと次のようなパターンですが、何度も遭遇したことがある方も多いかと思います。

Amazonの追加購入

Amazonで買い物をしたことのある方は何度も目にしているかと思いますが、カートに追加した直後のページで表示される、

「よく一緒に購入されている商品」

という部分や

「こんな商品も買っています」

というコンテンツ。

同じカテゴリや関連商品、付属品の消耗品など関連性の高いものがずらりと並びます。

「カートに入れる」

「購入する」

という心理的なハードルをクリアした前後に出てくることで追加購入がしてもらいやすくなります。

アップセル、クロスセルを使ったサイトの作りになっています。

アップセル=より高い商品やサービスを購入してもらうこと

商品の紹介ページやカートに入れた直後に出てくるページで表示されたりする「より高価な商品」「よりスペックの高い商品」を販売することがアップセル。

下の画像の赤枠内がアップセルを仕掛けているコンテンツ。


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クロスセル=関連した商品やサービスを購入してもらうこと

購入直前や購入後におすすめする「関連商品」を販売することがクロスセル。


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マクドナルドのご一緒に

マクドナルドの店員さんによく言われる

「ご一緒にポテトもいかがですか?」

「プラス30円でドリンクがLサイズにできますがいかがですか?」

というトーク。

これも注文が決まってお会計が表示されたあとに提案されます。

例えば、

ビッグマックセット 680円
ビッグマックセットLL 750円

この提示だと

(お腹が空いてて今日はLL!)

って決めてる方じゃなければ、おそらくビッグマックセット680円を選ぶ方が多いのではないでしょうか?

「ビッグマックセットください」

「680円になります、プラス20円でドリンクがLサイズにできますがいかがですか?」

「じゃお願いします」

「もう50円プラスでポテトもLサイズにできますがいかがですか?」

「うーん、じゃお願いします」

という流れの方が心理的なハードルは低いのではないでしょうか?

ちなみにぼくはマクドナルドでは一度もプラスの提案に乗ったことはありませんが・・・笑

誘導されたほうが購入しやすいことは明らかなのでマニュアルになっているのです。

マクドナルドのパターンでは、「ご一緒にポテトも~」がクロスセル、「プラス◯円で~」がアップセルになります。

紳士服販売店舗での追加購入

これは最近の実体験ですが、礼服を買いに紳士服店に行ったのですが、ベテラン風の方の接客を受けました。

礼服に関してはスーツほどの種類が無いのですが、どのくらい黒が濃いかで価格が変わってくるそうです。

「よろしければ袖を通してみませんか?」

と言われて最初に試着した礼服が真ん中の価格帯の礼服でした。

次に試着を勧められたのが高価な礼服です。

この時点で(うまくマニュアル化されてるんだなー)と関心したのですが、こちらから「一番安いものだとどれですか?」という問いに答えてくれて安いものも試着してみました。

最初に真ん中、次に高級な物に袖を通しているので、高級なものとの差が歴然としていて、安いものに満足するはずがありません。。。

少し迷ってしまったのですが、あまり着る機会もないのでそこはぐっとこらえて安い方を購入する決心をしました。

まさに迷った上での決断をした直後、ここからがテンションリダクション効果の始まりでした。

店員さん「シャツとネクタイも一緒に購入されると半額でお求めいただけますがいかがですか?」

ぼく「シャツとネクタイはあるので大丈夫です」

店「チーフはありますか?」

ぼ「あ、そういえば・・・」(チーフ追加購入)

お会計直前

店「お名前の刺繍が250円でできますがいかがですか?」

ぼ「うーん、とくに必要ないです」

店「かしこまりました。冠婚葬祭でこれからは夏のシーズンになるので、ジャケットが皆さん黒なので間違われることも多いので入れる方も多いですよ」

ぼ(う・・・たしかに・・・250円くらいならいいか)

ぼ「じゃお願いします」

店「礼服ってあまり着る機会も少ないので型くずれしやすいんですが、このハンガーだと型くずれしにくい作りになっているんです、ご一緒に購入だと600円なんですがいかがですか?」

ぼ「いや、それは大丈夫です」

こんな感じの流れで、結局最初は考えていなかった「チーフ、2000円」「名入れ、250円」の2250円の追加購入をしてしまいました。

マクドナルドでは一度もアップセルやクロスセルに負けてないと思ってたのに。。。

まさにテンションリダクション効果を狙った販売テクニックだと言えます。

テンションリダクション効果の良いところとしては、購入する決断をしたあとなので押し売りされている感じが薄れて、”自分で選択している”という感覚になりやすいことです。

テンションリダクション効果を使った営業のクロージング方法

WEBマーケティングや店舗販売などあらゆる場面で見ることが出来るテンションリダクション効果ですが、もちろん営業トーク、クロージングにも応用することができます。

契約してもらうことが決まった時に、テンションリダクション効果を使ってアップセルやクロスセルをしていくことはもちろんですが、断られそうなときに流れを変えて契約まで持っていくクロージングに応用することもできます。

契約を決めてもらった時のアップセル、クロスセル

これはよく使われているので実践している営業さんも多いかと思います。

お客様に「やる決断」をしていただいた直後に、追加サービスやオプションのご提案をしていきます。

ポイントとしては、アプローチの段階でさり気なくアップセルやクロスセルが可能な商品やサービスのトークを挟んでおくことです。

アプローチの段階である程度理解をしておいてもらわないと、アップセルやクロスセルのために「やる決断」をしたお客様に長々と説明や営業トークをしていると、お客様のせっかくの「やる決断」が薄くなってしまいます。

契約が決まった段階で、さらっと説明ができる状態まではクロージングまでに整えておきましょう。

テンションリダクション効果を使ったアップセル、クロスセルの流れ

アップセルやクロスセルをする商品やサービスをあらかじめ用意しておいた上で、その説明やメリット、デメリットをしっかり営業に組み込んだトークにしておきます。

  1. アップセルやクロスセルが可能な商品、サービスをリストアップ
  2. アップセル、クロスセルが成功するために伝えておく必要がある項目をリストアップ
  3. 営業トークのどの段階でどこまでそのメリットやデメリットを伝えておくか検討
  4. お客様が契約する決断をしたタイミングで提案

ポイントとしては、アップセルやクロスセルは複数用意しておくことで成功する可能性が上がります。

もちろん複数用意するとなると、アプローチの段階で本来の営業トーク以外のトークが必要になりますが、関連製品や付加価値として、違和感がなく聞いてもらえるようなアプローチのトークをしっかり用意しておきます。

そうすることで最後に、

「そういえば先程お話させていただいてた◯◯ですが、一緒に契約してもらえると◯◯円引きでご提案できるんですが、今後のことを考えると今一緒にの方がいいですよね?」

というトークで締めくくります。

注意点としては、アップセル、クロスセルに執着しすぎてしまうとお客様の感覚は”押し売りされている感”が強くなってしまって、せっかくのやる決断が揺らぎかねません。

あくまでも”さり気なく”がポイントです。

断られたら引いてみるクロージング

テンションリダクション効果をクロージングに応用することもできます。

・クロージングでお客様が悩んで決断できない・このままだと断られる流れになりそう
・さっきまで盛り上がっていたのになんだか雲行きが・・・

営業マンとしてはあまり直面したくないケースが良くあります。

こういうタイミングのお客様の心理としては、

(このままだと契約をしてしまいそうだ、どうしよう、ちょっと検討したいから今日のところは断っておこうかな)

と緊張感が高まっている状態です。

ここで急かしすぎたり押しすぎたりすると、お客様は「断る決断」をしてしまいかねません。

「検討するよ」と言われた時の対処としても有効な方法になりますが、

・資料をまとめて帰る準備を始める

というテクニックです。

もちろん、あくまでもテクニックなので、そのまま帰ってしまっては意味がありません。

「これ以上は売り込みはしませんよ」

という姿勢を見せることでお客様の緊張を解くのです。

資料をまとめてカバンにしまったら、お客様がどういう表情、どういう反応をしているかをしっかり観察します。

本来、日本人は断ることが苦手です。

断った瞬間にちょっと気まずくなることを恐れて優しくなったり、断る代わりに何かしてあげないと、という心理が働いたりします。

「もちろん無理にというご提案ではないので・・・」

と言いながら片付けたらそこからが勝負です。

次にやることは”お客様の本音を聞き出す”ことに注力します。

「ちなみに実際他社さんとかどうなんですか?」

「今回はあれですが、やっぱり気になってるところって◯◯ですか?」

という風に片付けながら聞いたりすると、思ったよりあっさり

「せっかく来てもらったのに悪いねー、実はやっぱり◯◯が気になるからねー」

と断りながら本音を話してくださるお客様は多いのです。

まさにテンションリダクション効果です。

その本音が引き出せたらあとは世間話のようなスタイルで不安に思っていること、気になっていることを解消していければ契約に至るケースは多々あります。

片付けた資料はどうするか?

もちろん世間話しながら「そう言えば、」と言いながら伝え忘れた感じに再度資料を取り出してクロージングに戻ります。

  1. 悩んでもらえるくらいのアプローチと信頼関係
  2. 断られそうな雰囲気に直面
  3. しっかり背中を押してみる
  4. 雲行きがあやしい
  5. 資料を片付けながらいったん引く姿勢を見せる
  6. お客様の緊張が解けたら本音を引き出す
  7. 引き出した本音をもとに不安を解消して再クロージング

手順としてはこのような流れです。

注意点としては、資料を片付けはじめたらそのままお客様が離席されないくらいの興味を持ってもらっている、自分に対しての最低限の信頼関係が築けていることは前提になります。

まとめ

いかがでしょうか?

テンションリダクション効果を使った営業テクニックは、営業成績を上げるために必要な獲得単価、契約率を上げる上でも十分有効に活用できます。

クロージングでお客様が悩んでからの契約率を上げたい、お客様あたりの獲得単価を上げたいと考えている方にはぜひ挑戦していただきたい方法です。

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